皐月賞馬イスラボニータこそ不在だったものの、ダービー馬ワンアンドオンリーを始めトゥザワールドやサウンズオブアース、サトノアラジンなど、3歳世代の有力どころが大体顔を揃えた今回の菊花賞。
戦前から面白いレースになるであろうことは予想されていたが、いざ蓋を開けてみれば予想を大きく上回るほど激しく、過酷なレースが展開された。
その過酷なレースを圧巻の走りで制して見せたのが、デビューからまだ半年足らずの新星
トーホウジャッカル。同馬が見せた素晴らしい走りを中心に、今年の菊花賞を振り返ってみたい。
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王者の走りを見せたトーホウジャッカル
追い切りでキレのある動きを見せていたように、状態そのものは出走馬中上位のモノだったと思う。
しかし追い切りで同時に目に付いたのは、お世辞にも効率のよい走り方とは言えない荒削りなフットワーク、そしてまだまだこれから良くなっていくであろうと思われる成長途上の馬体。
正直今回の出走馬の中でも、競走馬としての完成度という点では下から数えた方が良い存在だったのではないだろうか。
しかしレースではそういった未熟さを感じさせない、力強い走りを見せる。
中団後方から進めた前走・神戸新聞杯とは打って変わり、スタートから先団好位につける積極的な競馬を展開。
厳しい流れの中でも鞍上・酒井学騎手のリードが冴え渡り比較的ロスの無い競馬が出来たとは言え、勝負どころで自分から動き、4コーナーでは先頭に並びかけるという積極的な仕掛け。
そして直線早めに先頭に立つと、内からのサウンズオブアースの追撃に対し二の脚を使って更に引き離す芸当を見せるなど、キャリア6戦、デビューからまだ半年も経っていない馬とは思えない強さでゴール板を駆け抜けたトーホウジャッカル。
その走りはまさに「王者の走り」と表現すべきもので、今回の菊花賞において1番強い競馬を展開したのはトーホウジャッカルであるという意見に、まず異論を挟めるものはいないのではなかろうか。
まだまだ競走馬として完成度の低い段階でのこの強さは、同馬の底知れぬ能力を示していることは間違いなく、トーホウジャッカルの今後の更なる活躍が楽しみでならない。
蛯名騎手の手綱捌きが冴え渡ったサウンズオブアース
追い切りの動きとパドックの気配が共に素晴らしいと、レースでは余程大きな不利を受けない限り大体好走するものだが、菊花賞におけるサウンズオブアースもこの法則にしっかりと当てはまった1頭だったと思う。
レースでも今回同馬に初騎乗となった蛯名正義騎手が、まるで常日頃から京都で騎乗しているかのように、コースを熟知したロスの無い騎乗を披露。
好スタートから内ラチ沿いをキープして内枠の利をしっかりと活かすと、最後の直線では内が開くコース適性をしっかりと活かして内を鋭進。一旦は先に抜け出したトーホウジャッカルを捉えるかの勢いを見せた。
しかし最後は勝ち馬の驚異的な底力に屈する形で2着入線。今回の菊花賞で1番上手く乗ったのは蛯名騎手なのは間違いなく、これは勝ったトーホウジャッカルを褒めるしかないと思う。
普段は騎乗していない関西圏のレースで、この円熟味溢れる騎乗ぶり。改めて蛯名正義という騎手の器の大きさ・技術の確かさを実感した。
不向きなコースでステイヤー資質の高さを見せ付ける。小回りコースで更に評価したいゴールドアクター
パドックで馬を見た印象は、長距離で結果を出してきた割には胴が短めで、しかし脚の長さはソコソコある馬というもの。
また肩の出がちょっと硬くて歩幅も短く、小脚は使えそうだが、大きなストライドで持続的に脚を使えそうなタイプには見えなかった。
この辺は同馬の祖父であるグラスワンダーの特徴が良く出ているのだろう。
普通ステイヤーのイメージといえば、大きなストライドで距離を稼ぐという、人間で言うとマラソンランナー的なイメージが一般的だが、同馬はピッチ走法だけど脚の長さと心肺能力の高さで距離をこなし、ストライド走法の馬が苦手な小回りコースで機動力を活かして良績を残すという、典型的なロベルト型ステイヤーというイメージを受けた。
そういうタイプの馬なので広い京都コースでどうなのかと思ったが、そこは近年珍しいぐらいにペースに緩みがなく、根本的なステイヤー資質とレース経験、そして競馬センス(折り合いとか好位でロスの競馬を実行することが出来る能力)を問われる流れとなったことで、他の出走馬よりも優位性を発揮。
上位2頭には離されたものの、不向きなコースでも後続の追撃を寄せ付けることなく3着に入線することが出来たのだと思う。
個人的には機動力やパワーをより活かせる中山や、阪神内回りの方が向いてる馬だと思うので、今後はこういった舞台に出てきたら更に評価を上げたいところだ。
規格外的なところがあるタガノグランパ
この馬は本当に面白い馬だと思う。馬体のイメージと距離適性がこれほどリンクしない馬も中々いないからだ。
追い切りの動きは良かったし、パドックでも10キロ増えていたとは言え全く太め感は感じなかったので、状態は本当に良かったと思う。
しかし脚はそんなに長くなく、胴も標準よりやや短め。前の出もどちらかといえば硬めで、歩幅も短く典型的なピッチ走法にしか見えない馬が、ダービーはともかく長丁場の菊花賞をこなすとは・・・。
確かに今までもマイラーと思われる馬が菊花賞で好走した歴史はある。近年ではローズキングダムなどが3着にきた。しかしそれは比較的緩い流れの中で、道中徹底的に脚を溜めてこそのもの。
今回タガノグランパは内ラチ沿いをベタ回りしてきたわけでもなく、中団それなりの位置でしっかりと競馬に参加していた。それでいて最後までしっかりと脚を使ったのだから、これはもう心肺能力が相当高い規格外的な馬だというイメージで今後見た方が良いのではないだろうか。
ただいずれにしても、この距離が合うわけではないのは間違いないだろう。ベストはもっと短い距離、恐らく中距離ぐらいだと思う。そして変にペースが緩むよりも、持続的に流れる厳し目の流れの方が向く馬ではないだろうか。
微妙に距離が長かったショウナンラグーン
パッと見もう一絞り出来そうなお腹に見えがちだが、ロベルト系特有の腹袋のある体型なので、これはこれで良いのだと思う。ガッシリとした馬なので少し重苦しく見えるところのある馬なのだが、今回はスッと動けていて確りと仕上がっていた。
レース展開的にはいつも通り後方から直線勝負という形に。4コーナーでも外を回すことなく上手く馬群を捌き、直線これは3着有るかと思わせたが、最後はゴールドアクター等と同じ脚色になってしまった。
いつもよりも早めに動き出したせいもあるだろうが、基本的には少し距離が長かったのかなと思う。不器用ながらパワーはある馬なので、ベストは阪神芝2400mあたりなのではないだろうか?
今後は広めのコースで、スピードよりもパワーが求められるレース展開が予想される時に狙いたい気がする。
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