今週は東京競馬場でダートの重賞、「第29回 根岸ステークス(GⅢ)」が行われる。
注目を集めているのは2013年の皐月賞馬、ロゴタイプの参戦だろう。
例年この時期になるとフェブラリーステークスが行われる関係上、芝で実績を残してきた馬のダート挑戦が発表され、競馬ファンの関心を買うことが多いのだが、今回ロゴタイプは前哨戦から挑戦してきた。
果たしてこの挑戦は成功するのか失敗するのか。色々な視点から予測してみたい。
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馬体から推測するダート適性
一般的にダート馬の馬体といえば、パワーを必要とされることから大柄で筋骨隆々というイメージを持たれている方が多いだろう。
以前はまさにそういう馬がダートで活躍していた訳だが、最近はダートも芝と同じようにスピード化が進み、典型的なダート馬ではスピード負けして勝ち切れないという場面が増えてきた。
また今回根岸Sが行われる東京競馬場は、JRAの競馬場の中でも砂質が軽く特にスピードを要求され易い競馬場で、筋骨隆々で丸々とした昔ながらのダート馬では、まるで要が無いコースとなっている。
では最近のダート馬の馬体におけるトレンドは何かといえば、それは芝馬よりは多少幅があって背は標準か高め。筋肉の質は硬質というものだろう。当然多少動きが硬くても気にする必要は無い。
そういう認識を頭に入れた上で、今回のロゴタイプのフォトパドックを見てみる。
まず馬格だが、元来500キロ近辺で競馬を使っている馬なので、馬格に対しては問題とすべきところは無い。近年のダート強豪馬もだいたい500キロ前後で競馬を使っている馬が殆どなので、その点で体格負けすることは無いだろう。
馬体のバランスに関してだが、今回のフォトパドックは少し緩めの状態で撮影されている為、上体の方が大きく脚が短めに写っているが、以前の写真などをみるとそんなことは無く、脚の長さは標準的だろう。
基本的には中距離馬の馬体なので、1400mという距離に対して適性があるかというと少し不安が残る。スタートダッシュで若干後手を踏む可能性は考慮しておかなければならないだろう。
筋肉の質に関しては柔らかく、典型的な芝馬の筋肉だろう。全体的に丸っこく肉付きの良い馬を出しがちなノーザンダンサー系において、サドラーズウェルズ系は比較的スラッとして柔らかい筋肉を持つ馬を出しやすいが、ローエングリンは特にその傾向が強い気がする。
ローエングリンの出世頭であるロゴタイプはまさにその代表的な存在で、母父サンデーサイレンスの血も相まって芝で結果を残してきたのだろう。正直硬質さが足りない為にダート向きの筋肉とは言えず、少なくともダート代わりがプラスに作用することはないと思う。
追い切りを見た上での状態評価
ロゴタイプの最終追い切りは28日、美浦・南Wコースで2頭併せで行われた。
パートナーの外を追走する形で6ハロンから時計を出した同馬。直線では最後軽く気合を付けられた程度で派手さは無かったが、それでも全体で80秒5を計時し先着と、悪くない動きだったと思う。
確かに見た目の派手さは前走の方が良かったが、今回ロゴタイプの走りを見ているとだいぶバランスが取れた走りになってきたように思う。
前走の追い切りでは全体的に力も入っていたのか、馬体の前半分が浮き上がるような形となりお世辞にも効率の良い走りには見えなかったが、今回は力みも取れたことにプラスして、背中から腰に掛けて力が付いてきたのかラインが安定し、トモの頂点の位置がだいぶ上に上がってきた。
それでもまだ背中のラインは若干斜め後ろに下っているような形なので今後更なる良化を期待したいところだが、それでもだいぶ良い頃の姿に戻ってきたといえるだろう。
追い切りを見ても一戦ごとに状態が良くなってきていることは確かなので、今回も前走以上の状態でパドックに登場することはほぼ間違いなさそうだ。
それだけにここでバクチともいえるレース選択をしたことが、ここまで上向いた波を台無しにする結果にならなければ良いのだが・・・。
データから見たダート適性
ここに興味深いデータがある。
ローエングリン産駒は中央競馬でここまで4世代が競走年齢に達している。そしてダートでは先週までの段階で産駒が延べ166戦しているのだが、勝ち星は僅かに1勝。馬券圏内に入ったのも2着が2回、3着が5回の勝率0.6%と壊滅的と言っていい悲惨な成績となっている。
ちなみに芝だと延べ407戦して25勝。勝率6.1%だから、実に10倍以上の好成績を残している訳で、ここまで芝に特化している種牡馬もそういないのではないだろうか。
ローエングリンの父であるシングスピールも芝向きの種牡馬とはいえ、ここまで偏ってはいなかったはずなので、これはもうローエングリンという種牡馬の特徴なのだろう。面白い種牡馬としか言うしかない。
このデータを踏まえて考えると、ロゴタイプのダート挑戦に関しては悲観的な予測しか立ち得ないのだが・・・。
この悲観的なデータを覆すことが出来るか。そういう意味でもその走りに注目したい。
まとめ
ここまで記してきた考えをまとめると、正直ロゴタイプのダート挑戦に関しては否定的な考えしか出てこない。ダート競馬挑戦をポジティブに受け止める要素が殆ど無く、パフォーマンスを下げる結果になる可能性が大だからだ。
無理やりポジティブな意見を見出すならば、多くの芝GⅠ馬が行ってきたようなぶっつけ本番でのダート挑戦ではなく、前哨戦から段階を踏んでの挑戦を試みようとしているところだろうか?
前哨戦ならば本番と比べてもレースレベルが下がるので、ダート競馬の経験値を比較的ダメージ無く積むという点において上手く行きやすい。これが本番だと揉まれに揉まれ、何が何やら分からない内にレースが終わってしまうという事が殆ど。
その点前哨戦ならば人馬共に余裕はあるので、このような事態には陥りにくいと思うが・・・。あくまで陥りにくいというだけで、結果として不要なダメージのみを積む可能性が無いわけではない。
いつもと違う馬場で、いつものような先行しての競馬が出来るのか?もしスムーズに先行できなかった場合、前の馬が蹴り上げるキックバックにロゴタイプ自身が耐えられるのか?
過去に幾多のGⅠ馬たちが挑戦してきたダート競馬。その壁は思いの他高く、多くの馬たちが上手く行かずに大敗してきた。
その結果、心身に刻まれた予想以上のダメージの大きさに復調に手間取り、貴重な時間を消費してしまった馬たちを多く見てきただけに、あまり必要性があるとも思えない今回の挑戦は、期待よりも心配のほうが先に立ってしまう。
ようやくかつての輝きを取り戻しつつある皐月賞馬ロゴタイプ。
その輝きが増すのか消え去るのか?根岸ステークスは同馬の競走生活にとって大きな分岐点となることは間違いなさそうだ。
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