二強対決と謳われた今年の京都記念だが、結果としては二強ともに敗れるという波乱とも言える結果で幕を閉じた。
その二強の中でもキズナは鋭い追い込みを見せて3着と見せ場は有ったが、もう1頭のハープスターは中団で競馬をするも、直線ではさっぱり伸びないという予想外の姿を見せて敗退。
今回は全く見せ場のなかったハープスターについて、どうしてそうなったのかを考えてみたい。
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ハープスターは何故伸びなかったのか?
ハープスターの敗因について思いつく要素はだいたい次の通りだろう。
- 休み明けとそれに伴い大幅な馬体増(要は仕上がり)
- 距離が長い?
- いつもと違う中団からの競馬。
それでは一つずつ項目ごとに分けて考えてみたい。
仕上がり、状態について
まずは仕上がりについてだが、現地で見た限りでは馬の仕上がりは悪くなかったと思う。
毎年冬の時期は冬毛が伸びて見栄えが悪くなる馬なのに、今回は冬毛はほとんど抜けていて新陳代謝が活発に行われている事が窺えたし、お腹周りもスッキリしていてプラス14キロという馬体増の影響は殆ど感じられなかった。
では増えた分は何に変わったのかといえば、単純に背が伸びて馬が大きくなった気がする。以前はもう少し背が低かったはずだ。あと全体的に筋肉も付いたように見えた。
ハープスターという馬は元々背中から腰に掛けてが若干安定していない馬で、今回も多少歩いている時に背中の軸がブレている感じはあった。しかしいつもこんな感じなので、特段気にする要素ではなかったと思う。
ハープスターの距離適性
基本ハープスターという馬の距離適性は、1600mから2000mまでだと思っている。これは昨年の3歳時からずっと変わらぬ意見だ。
ただ距離の融通性という意味では、結果が示すようにクラシックディスタンスのレースでも高いパフォーマンスを安定している。この距離に対する高い融通性は、筋肉質過ぎない馬体の造りと、直線まで脚を溜める競馬がもたらしているものだろう。
今回もパドックを見る限りでは、背が伸びて身体全体は大きくなったものの、筋肉程よく付いていてまた硬くなっておらず、身体全体の柔軟性も何ら失われていなかった。
それだけに距離に対する不安は、いつも通りの競馬をするならばこの時点では皆無だった。
いつもと異なる中団からの競馬
今回いつもと違う中団からの競馬をしたハープスターだが、その事で普段のハープスターが見せない姿を見せていた場面があった。
それは向こう正面から3コーナーにかけて、ハープスターが何度か軽く行きたがった場面。別に引っかかる、折り合いを欠くというほど酷いものではなかったが、何度か前方の馬に迫っては、川田騎手が手綱を引いて制御していた。
今までのハープスターといえば、馬群後方の囲まれない位置でじっくりと脚を溜め、勝負どころから徐々に吹かして行き直線一気に爆発させるという競馬をしていた。
そういう競馬において、今回のような行きたがるそぶりは殆ど見せたことがない。当然道中のピッチもほぼ安定していたはずだ。
人間もそうだがレース中に頻繁な加減速を繰り返すと、想像以上にスタミナを消耗する。ピッチが上がるという事はスピードアップしているという事なので、これを何度も繰り返していたらいつも以上にスタミナは消耗していただろう。
また今回はいつもより前のポジションを取りに行った為、スタート時にもいつも以上にスタミナを消費していた筈だ。そう考えると今回のハープスターは、勝負どころを迎える時点で今までにないほど余力が乏しかった事が推測される。
導き出された敗因
今回ハープスターはゴーサインが出されてからも全くピッチが上がらず、全然反応できていなかった。いつもの同馬ならゴーサインが出た瞬間に一気に脚の回転が速まり、とんでもないスピードで加速していた筈なのに。
それは今の時点で判明している材料だけで推測するならば、いつもと違う競馬をすることにより普段よりもスタミナを消耗し、ゴーサインを出された時点でピッチを一気に上げるだけの余力が残っていなかったからだろう。
そしてそれは正攻法の競馬をするならば、2200mの距離は本質的に長いのでは?という推測にも結びつく。今回のような競馬ですぐに結果を出そうとするならば、マイルぐらいの距離でないと厳しそうな印象を受けた。
ということでハープスターの今回の敗因に対する筆者の結論としては、
「普段と違う競馬を実施した事による戸惑いから、いつも以上にスタミナ(余力)を消耗してしまい、いつものような速い脚を使えなかった。そしてこのような競馬で結果を出すには、2200mという距離は長い可能性がある」としたい。
陣営の姿勢に疑問
最後に疑問に思う事を一つ述べておきたい。今回のハープスターの戦法については、レース後のコメントにより松田博資調教師(若しくはオーナーサイド)から「こういう競馬をしてくれ」とオーダーが出ていた事が判明している。
それ自体は何ら問題は無いのだが、こういう行った事のない戦法に対しての用意を、事前にしっかり実施していたのか?という点では大いに疑問が残る。
それはハープスターの今回の調教パターンを見てみても、いつも通り前半ゆっくりの終いだけ伸ばす追い切り内容で変わっておらず、前で競馬する事によるスタミナ消費に対する対策は何ら行われていないように思えるからだ。
確かに調教とレースは全然違うので、調教段階でやれることは限られているだろう。ただ人間もそうだが、練習していない事を本番でいきなりやれと言われても、殆どの人は出来ないはずだ。出来る人は余程の天才だけだろう(苦笑)
ハープスターのレース中の挙動を見てみると、普段と違うレースを強いられた事により明らかに戸惑っていた。残念ながら彼女も天才ではなかったという事だろう。
そう考えると全く練習していない事をいきなりレースでやれと言われた川田騎手にも同情の余地は大いに有る、しかも次走のドバイでは自身は乗れないのにも関わらずだ。
これがドバイも騎乗が確約されているならば、川田騎手自身にも試す価値はあるので納得できる。試して駄目ならば次走では元に戻せば良いと考えられるからだ。
しかし次走以降の騎乗が確約されていない身で、こういうバクチ的な騎乗をオーダーされるのは流石に可哀想だ。いくら結果を出すのがプロだとは言え、それにも限度があるだろう。
次走のドバイシーマクラシックでは、ハープスターの鞍上にはライアン・ムーア騎手が予定されていると聞く。
そこで今回のような正攻法の競馬で結果を出せたとしたら、それはムーア騎手の手腕とは別に、京都記念で正攻法の競馬をした事による経験値が活かされたと考える事が出来るだろう。
また以前と同じように追い込む競馬で結果を出したとしたら、それはまた京都記念での反省を生かしたからこそ導き出された結果と考える事が出来るはずだ。
いずれにしても京都記念で川田騎手があえて泥を被ったお陰で、次走以降にその経験値を活かすことが出来るという考え方が当然出来るので、是非とも陣営には川田騎手へのケアを怠らないで欲しいなと要望したい。
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