劇的な決着となった今年の日本ダービー。
その主役が見事ダービーを制したキズナと武豊騎手であることは間違いないのだが、個人的にそれに匹敵するぐらい大きな存在感を示したと思うのが、エピファネイアと福永祐一騎手のコンビだと思う。
圧倒的なパフォーマンスを発揮し、あと一歩のところまで栄冠に迫っていたエピファネイアと福永祐一騎手。
最後の最後でキズナと武豊騎手に屈した訳だが、果たして何が足りなかったのであろうか。改めてエピファネイアの視線でダービーを振り返ってみたい。
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■驚異的な走りを見せるも勝利の女神は微笑まず・・・
1、パドック パドックに現れたエピファネイアの評価だが、後から話を聞くと専門家による評価は二分されていたという。
極限まで絞り込まれた素晴らしい出来と評価する声も有れば、絞り込みすぎと酷評する声も・・・。確かに私も最初同馬をパドックで見た時は判断に迷った。パッと見、ギリギリの馬体に映ったからだ。
しかしよくよく見てみると、確かに馬体そのものは細くなっているが肩や後肢といった『速く走るために必要な筋肉』は落ちていない。それどころか張りは間違いなく前走以上。
歩様もパドック入場当初は若干ぎこちなく見えたが、周回を重ねるごとに勢いを増し担当者を引っ張るように。気持ちの乗りと動きの素軽さ、躍動感は言うことなし。
これらの事実を総合的に勘案すると、一見調整失敗に思えるほどの究極の仕上げをエピファネイアは施されていた。そう考えたい。
2、レース レースでは中団から。
まずまずのスタートを切ったエピファネイア。スタート直後は行きたがる素振りも見せず楽に走っていたが、福永騎手が前に馬を置こうとして内に寄せると、その途端にエピファネイアの闘争心にスイッチが入ってしまう。
競走馬が折り合いを欠く理由は大別して2つある。1つはペースが遅いのに我慢できず自分のペースで走ろうとする場合。もう1つはその旺盛な闘争心から馬の後ろにいることを我慢できず、先頭に立とうとする場合。
エピファネイアが行きたがる理由は恐らく後者だろう。ペースが速かろうが遅かろうが関係なく、とにかく馬の前に出たい、勝ちたいという気持ちが強すぎるのだ。
自分の気持ちをコントロールできず、必死に前に出ようとするエピファネイア。それを何とか我慢させようと、全身でブレーキを掛ける福永騎手。
何とか1コーナーで内ラチ沿いのポジションを確保し前に馬を置くことが出来たが、それでも鞍上に対し前に行く事を要求し、前の馬に乗り上がるような勢いで追走するエピファネイア。
その結果3コーナー手前で前の馬に接触して躓き、福永騎手が落馬寸前になるアクシデントを起こしてしまう訳だが、結果としてあそこで躓いたことにより、一瞬馬の力が抜けたことは良かったのかも知れない。
その後体勢を立て直すと、改めて行く気を全面に見せ始めたエピファネイアだが、体勢を立て直すことに気を取られた結果、多少力みが取れて息が入ったように映った。
あそこで躓かなかったら、それこそずっと力んだまま2400mを走ることになったので、最後の直線でアレだけの脚を使えたかどうかは疑わしい。
確かに躓いたことにより蒙った不利は大きかったと思う。と同時に怪我の功名的なメリットも多少は存在したのではなかろうか。
勝負どころの4コーナー。福永騎手はそこでエピファネイアを動かすことなく、流れに身を任せてジッとしている。只でさえスタートから掛かり続けていたのだ。ギリギリまで追い出しを我慢するつもりだったのだろう。
最後の直線。徐々にアクセルを吹かしながら、馬群を割って出るスペースへと馬を導く福永騎手。
残り300m。ロゴタイプとコディーノの間にエピファネイアを導くと、ゴーサインの右鞭を数発。それに反応し末脚を爆発させるエピファネイア。
あれだけスタミナを消耗していたのに、どこにそれだけの力が残っていたのか?人知を超えた力を発揮し先頭に踊り出るエピファネイアの姿に、正直寒気すら覚えた。
残り100mで敢然と先頭に立つエピファネイア。「勝った!!」そう思った瞬間、外から迫る一陣の影。
福永騎手もその存在に気付いていたのだろう。エピファネイアを外に導くことにより併せ馬の状態に持ち込み、最後の一踏ん張りを引き出そうとするが、武豊とキズナの勢いはそういったもので抗らえるものではなかった。
あと数mのところで手から零れてしまったダービー馬の栄冠。勝利の女神は福永騎手とエピファネイアには微笑まなかったということだが、それでもあえて私はこう言いたい。
記念すべき80回目の日本ダービー。このダービーにはダービー馬に相応しい馬が2頭存在したのだと。
3、今後について
2歳の暮れには牡馬クラシック最有力候補と言われながらも、この春は無冠に終わってしまったエピファネイア。
今回のダービーでの驚異的な走りを見ても分かるように、身体能力という点では恐らくこの世代でナンバーワン、一枚抜けた存在であることは間違いないと思われる。
ただそれでも勝てないのは、最大の長所でもあり短所でもある旺盛な闘争心を、自分で上手くコントロール出来ない為。要するに馬がまだまだ若い訳だが、それだけに秋以降気性面が成長すれば更なる活躍を期待出来るはず。
その潜在能力は、日本の競馬史に名を残した幾多の名馬たちにも勝るとも劣らないモノを持っているエピファネイア。それだけに自分をコントロールできるようになった時、競馬史に新たな1ページを加えるような活躍を期待することが出来るはずだ。
今回のダービー出走に当たってお釣りが無いほどに攻められ、結果を残したエピファネイア。それだけに蓄積された疲労は相当なものだろう。
まずはゆっくりと歴戦の疲れを癒し、秋には一回り大きく成長した姿を見せて欲しいと思う。
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