戦前はジェンティルドンナとトーセンラーの2頭のG1馬の激突が、大きな注目を集めていた今年の京都記念。
終わってみれば圧倒的存在と思われたG1馬2頭は揃って敗れ去り、伏兵と目されていたデスペラードがまさかの逃げ切りを見せるという驚きの結果になった訳ですが、なぜこういう結果になったのでしょうか?
今回はまずは前編として1着から4着までの馬たちの仕上がり・レース振り等を分析し、後編では圧倒的1番人気に支持されながらも、全く見せ場無く終わったジェンティルドンナについて振り返って見たいと思います。
スポンサードリンク
■デスペラード 出来は出走馬の中では良かったですね。有力馬の多くが休み明けの中で、ここまで使い続けてきたデスペラードの出来が良かったのは、まあ当然なのかもしれませんが。
今回デスペラードが京都記念を制した最大の勝因は、言うまでもなく横山典弘騎手の大胆な騎乗ぶりに尽きるでしょう。
今回レースに挑んだ騎手たちの注目がジェンティルドンナとトーセンラーに集中する中、その騎手たちの思考の隙を突くかのように、あっと驚く逃げの手に出た横山典弘騎手の大胆な判断には、さすが勝負師と唸らざるを得ませんでしたね。
考えてみれば、こういった有力馬2頭が牽制し合うレースと言うのは、逃げの手に出た騎手にとって思い通りの流れに引き込み易いです。
これがもし有力馬1頭だけのレースなら、他の騎手たちの注意も比較的逃げ馬に向き易く、また有力馬の騎手がレースを作るために、自分から逃げ馬を潰しにくることもあるでしょう。
しかし有力馬2頭が牽制し合うレースだと、他の騎手の注意もどうしても有力馬2頭に集中しがちになりますし、有力馬2頭の騎手たちも、自分が先に動く形は己に不利になる為に嫌うので、結果としてどうしても流れが膠着しがちになります。
実際今回の京都記念は、この距離のG2戦の中ではかなり遅いペースでのレースとなりました。道中は12秒後半から13秒台のラップが続き、ようやくレースの流れが締まったのは残り800mを過ぎてから。
元々末脚には定評のあるデスペラードにレース終盤まで楽逃げをされ、そこから自身得意とする末脚勝負に持ち込まれたら、さすがにG1馬2頭といえども苦しくなるのは当然。
またこの日の馬場は、ここのところの降雪の影響で見た目にも分かるほど荒れており、如何にもパワーを要求される馬場状態でした。
この様な馬場状態も、パワーを必要とされる馬場状態を好むデスペラードの背中を押したのは、間違いないところだと思います。
■トーセンラー 昨秋のマイルCS以来の出走でしたが、仕上がりは悪くなかったと思います。
大幅なプラス体重が示すように若干重めだったかもしれませんが、それまでどちらかと言えば薄手だった馬体に、今回筋肉が確りと付いていましたし、以前には無かったG1馬の風格の様なモノを漂わせていました。
結果的に2着に敗れたわけですが、レース内容自体は休み明けを考慮すると、充分なものだったのではないでしょうか。決して得意ではない荒れ馬場で、一時は大外を突き抜ける勢いで伸びて来た訳ですからね。
最後脚が上がったのは、休み明けの分にプラスして道中いくらか掛かっていたせいでしょう。前走マイルG1の流れを経験した馬にとって、さすがに今回のペースは遅過ぎました。
逆に多少掛かったとはいえ、休み明けでしっかりと距離延長に対応して見せたことは、改めて同馬の競馬センスの高さを証明したと言えます。
レース後、同馬を管理する藤原英昭師から『今後は安田記念を目標にする』と発表されました。
ここまで京都コースに抜群の適性を示していることを考えれば、昨年2着の春の天皇賞を目指すことも決して悪い選択肢ではないと思います。
しかしトーセンラーの今後を考えれば、府中のマイルG1を獲りにいくほうが更なるプラスになることは間違いないでしょう。
一部では京都コース専用機と呼ばれ、他のコースではその実力に相応しい実績を残せていないトーセンラー。今後のことを考えると他のコースでの実績も是非とも欲しいだけに、安田記念では素晴らしい走りを期待したいところです。
■アンコイルド プラス12キロと大幅な馬体増で出走してきた訳ですが、元々太めに見せる体型の馬だけに、数字ほど増えたという印象は受けませんでした。
絞りづらい時期、プラス休み明けと言うことを考慮すれば、まあ許容範囲の馬体増だったのではないでしょうかね。
仕上がり自体は悪くなかったと思います。前肢の出が若干硬いのはいつものこと。逆にこの日のような荒れ気味の馬場は、前肢の出が硬めの馬の方が馬場を上手く捕らえられ、結果としてプラスに働きやすいモノ。
そして若干硬めの前肢に比べて、後肢の伸びはそれほど澱みなくスムーズ。もちろんあくまで休み明けであり、使っていけばもっと良くなる要素は大いに認められましたが、休み明けはそれほど造ってこないことで有名な矢作厩舎所属ということを考えれば、実に良い仕上がりだったのではないでしょうか。
レースは逃げたデスペラードの直後2番手を追走。まさに言うことない好ポジションで、鞍上の後藤浩輝騎手も内心ほくそ笑みながらアンコイルドの手綱を取っていたのでは?。
その後も前にデスペラードを見ながら、内ラチ沿いの経済コースで脚を溜める同馬。道中何度か行きたがる面は見せるものの、後藤騎手がクイッと手綱を引くとすぐに従っていた様に、折り合いも充分付いていました。
最後の直線でもデスペラードの内を突いてしっかりと伸びたアンコイルド。ここで少し贅沢を言うならば、直線入り口でデスペラードに並びかけるところまで行ければよかったのですが・・・。
まあデスペラードも道中充分に脚を溜めており、また末脚の破壊力はデスペラードの方が上だと思われますので、これはまあ仕方がないでしょう。相手が一枚上でした。
それでもこのメンバー相手にしっかりと脚を使い、最後3着を死守したのは立派。昨年の夏以降、今まで戦ってきたステージより上の舞台で良績を残してきている訳ですが、今回メンバーの揃った京都記念でまた確りと結果を残したことで、昨年の成績が勢いだけではなく地力強化の上にもたらされたものだと、しっかりと証明できました。
これならば今後も2000m前後の距離で、人気不人気に限らず堅実な走りを見せ続けてくれるのではないでしょうか。
そんなに人気にならないタイプの競走馬でもありますし、馬券的にも今後の活躍に期待したいところですね。
■ラキシス 同馬も休み明けでプラス10キロと馬体を増やしてきた訳ですが、正直全く太く感じず、もっと増えても良いのではないか?という印象すら受けましたね。
元々脚長でスラッと見せるタイプのラキシス。エリザベス女王杯でも華奢に見せる馬体で2着と好走していたように、去年の秋は正直素質だけで走っていたのでしょう。
それが年が明けてようやく飼葉が身になるようになってきたようで、管理する角居調教師も『ここに来て攻める調教が出来るようになった』と手応えを語っていたほど。
今回の京都記念でラキシスはまさに変わりつつある姿を見せた訳で、今後春から秋に掛けて更なる成長が期待できそう。
今回は今までとは違いこの路線の一線級が相手ということ。また本質的に向かない荒れ馬場という厳しい条件で4着と敗れたわけですが、最後はあわや3着という素晴らしい末脚を見せただけに、この結果を残念がる必要は全くないと思います。
それこそこの世代の牝馬では一番伸び代を残しているだけに、秋には牝馬路線はおろか秋の天皇賞、ジャパンカップでの活躍すら期待したいところです。
◆ブログ移転しました◆
新しいブログ『馬事総論ドットコム』を開設しました。今後はこちらのブログで更新を続けます。
新しいブログのURLはhttp://bajisouron.com/です。
恐れ入りますがお気に入りの変更をお願いします。
スポンサードリンク