今年も大観衆の中、東京競馬場で行われたダートの頂上決戦、フェブラリーS。
有力馬はこの先にドバイを見据える中、一体どのようなレースが展開されるのだろうと注目していましたが、勝ったのは16頭中16番人気という伏兵コパノリッキー。
まさに『まさか・・・』という言葉がこれ以上ふさわしい結果はないという決着となった訳ですが、なぜコパノリッキーはこの低評価を跳ね返し戴冠できたのか。
さっそくですが自分なりの視点で振り返ってみたいと思います。
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■1着コパノリッキー1、状態 パドックを見てのコパノリッキーの状態ですが、個人的には8割から良いとこ9割程度の出来に映りました。
馬体そのものはしっかりと仕上がっていましたが、良い時に比べて馬体の張りも物足りませんでしたし、後肢の飛節の伸びもそれほどではなく、歩様に素軽さが足りませんでしたね。
例えばちょうど1年前のヒヤシンスSは、3着に敗れたものの状態は自体は今回より断然良かったです。
そう考えると骨折休養明け3戦目でだいぶ上向いてきたとはいえ、まだまだ良くなる余地を残しての今回の好走は、本当にたいしたものだと思います。
2、レース レースの流れ自体は、先行したコパノリッキーにとって非常に有利な流れになりましたね。
ハロン時計:12.4 - 11.3 - 11.8 - 12.5 - 12.6 - 12.0 - 11.5 - 11.9 上がり時計:4F 48.0 - 3F 35.4 上の時計は今回のフェブラリーSにおける公式ラップですが、前半3ハロンの通過タイム35秒5は、近年の中でもトランセンドが逃げ切った2011年のフェブラリーSに次ぐ遅い時計。
しかも今回はその後の4ハロン目に12秒5、5ハロン目に12秒6と更に遅いラップを刻んでいますからね。過去10年のフェブラリーSの中でもこれほど先行馬有利の流れは、2004年アドマイヤドンが勝ったレース以来だと思います。
この流れの中、逃げたエーシントップの直後2番手で追走していたコパノリッキー。有力馬が後で牽制し合っていたという事もあり、最後の直線までじっくりと脚を溜められたのは、かなり有利に働いたことでしょう。
最後の直線ではバテたエーシントップを交わし、早々に先頭に立つことになった同馬。外からホッコータルマエが良い脚で迫り、一旦は半馬身ほどまで差が詰まるものの、そこから再度1馬身半ほど突き放した脚は見事でした。
最後も多少の仕掛け遅れがあったとはいえ、必死に追撃してくるホッコータルマエを凌ぎ切った末脚は見事。ゴールがもう100mほど先にあっても、何とか凌ぎ切れたのではないかという脚色でしたね。
今回のコパノリッキーの勝利。確かに展開が大きく向いたのは確かだと思います。ただそれだけを取り上げフロック視することは危険ですし、馬や関係者に対しても失礼でしょう。
最初に述べたとおり、コパノリッキーは今回骨折長期休養明け3戦目で、過去2戦よりも上向いていたもののベストとは言い難い状態でした。
その状態で展開面の助けがあったとはいえ、このメンバーをこれだけのパフォーマンスを示したのは、実に驚くべきことだと思います。
元々3歳春には世代最強馬の呼び声も高かった同馬。復調するのに若干手間取っていたものの、ようやく本来の実力を取り戻してきたと言うのは正しいのでしょう。
まだまだこれからが楽しみな明け4歳馬。
春以降、更に充実したコパノリッキーの姿を楽しみにしたいと思います。
■2着ホッコータルマエ1、状態 パドックで見たホッコータルマエの状態ですが、G1に臨むに相応しい素晴らしい状態だったと思います。
若干歩様に硬さを感じさせましたが、元々パドックでは硬い歩様を見せる馬なので、これは気にするようなものではなかったでしょう。
冬場だというのに毛ヅヤもピカピカでしたし、纏った筋肉も弾力を感じさせる非常に素晴らしいものでした。
陣営には当然次のドバイ遠征も頭の中にあり、若干の余裕は残した仕上げだったと思いますが、それでも出来うる限りの事を施した結果もたらされた、素晴らしい仕上がりだったと思います。
2、レース レースでは好位5~6番手の外を追走。
15番枠からの発走と言うことで、無理に押していく訳にも行かなかったホッコータルマエと幸騎手。そう考えるとほぼ思い通りの位置を取れたと言えるのではないでしょうか。
道中は常に前を射程圏に入れながら、後ろの有力馬の動向を気にするという難しい競馬に。
それでも徐々にポジションを押し上げながら直線に向けていましたし、ほぼ理想的な競馬は出来たのではないでしょうかね。
誤算だったのは勝ち馬の予想以上の粘り越しと、ベルシャザールの仕掛け遅れでしょう。
単勝最低人気の先行馬と1番人気の差し馬を比べたら、どうしても注意は1番人気の方に向くのは当然。
思ったよりも後方に位置し、中々追い上げて来ないベルシャザールを気にした一瞬の隙に、勝ったコパノリッキーに抜け出されてしまったホッコータルマエ。
ただ勝ち馬が直線で見せた末脚は見事なもので、あの隙が無くてもホッコータルマエが差せたかというと正直微妙なところはありますが・・・。着差自体は少ないものだけに、どうしても悔いは残ってしまいますね。
それでも有力馬の中では堂々としたレース振りで、しっかり連対を果たしたホッコータルマエ。伊達にG1を5勝していません。
今後は予定通りならドバイ遠征と言うことですが、環境の変化に動じることが少ないタイプだけに、ドバイでも良い競馬を見せてくれると期待しましょう。
■3着ベルシャザール1、状態 戦前は一部で追い切りが足りていないとか、太目が残っていると不安説が囁かれていたベルシャザールですが、いざパドックに登場した姿は素晴らしいものだったと思います。
心配された馬体重も前走からプラス2キロ。毛ヅヤは冴え筋肉がしっかりと浮き出たパワフルな姿は、さすが松田国英厩舎と唸るような素晴らしい仕上がりでした。
歩様も軽やかで、さすが芝で活躍してきた馬と感じさせる素軽さを見せていたベルシャザール。1番人気に相応しい素晴らしい仕上がりだったと思います。
2、レース ゲートはマズマズ出たものの、二の脚が付かずに後方からの競馬になってしまったベルシャザール。
鞍上のクリスチャン・デムーロ騎手も『これは拙い』とポジションを押し上げようとしますが、予想以上に早く隊列が固まってしまい、それ以上動くことが出来なくなってしまいました。
道中は後方の大外から徐々にポジションを押し上げていくしかない形に。スローな流れでこの展開になると、さすがに能力上位のベルシャザールといっても厳しくなるのは当然。
また鞍上のクリスチャンの中には、大外を強引に捲くっていくことで生じるスタミナロスについて、懸念する考えがあったのでしょう。あのポジションに位置する馬にしては、仕掛けを直線入り口まで遅らせる手に出ました。
結果的にこの判断が更に前を有利にした結果、追い込み届かないどころかギリギリ3着を確保するという結果に繋がってしまったベルシャザール。
全ての責任を鞍上のクリスチャンに求めるのはさすがに酷ですが、今回に関しては彼らしくない消極的な競馬でしたね。
■4着ノーザンリバー 前走の根岸Sのパドックでも状態の良さをアピールしていたノーザンリバーですが、今回も前走に劣らない良い状態をキープしていましたね。
レースでもこの好状態と6番枠の利を、鞍上の戸崎騎手がフルに生かす競馬を見せました。好位の内でジッと脚を貯め、直線しっかり脚を伸ばす騎乗ぶりは、戸崎騎手が得意とする競馬でしょう。
ただ本質的には千二や千四がベストな同馬。それだけに最後は差をよく詰めるものの4着という結果になりましたが、能力の高さは証明して見せたと言えるでは。
今後はベストといえるスプリントの舞台で、更なる活躍を期待したいと思います。
■5着ブライトライン
出来はマズマズでしたね。目を引く素晴らしい状態と言うわけではありませんでしたが、充分力を発揮できる出来だったと思います。
今回の好走の要因は、しっかりと先行馬有利の流れに乗り切ったことでしょう。そういった意味では鞍上の福永騎手はしっかりと仕事をしたのではないでしょうか。
序盤は中団やや後方の位置取りでしたが、流れが緩いことを見切りそのポジションに固執せず、徐々に押し上げていった判断は見事でした。
結果的にポジションを守ることに固執した馬たちは、最後の直線で思うように伸びきれずに終わってますからね。
同馬も一旦は3番手に上がる脚を見せたものの、最後は末脚も鈍り5着で入線。
この辺はこの馬が今まで抱え続けてきた詰めの甘さに起因する話だけに、まあ致し方ないところだと思います。
■6着ワンダーアキュート 脚部不安説が出ていたのでパドックを注目していたのですが、思ったよりも良い状態だったのではないかと思います。
ただ今回の状態よりも良い時のワンダーアキュートをたくさん知っているだけに、GⅠという舞台を考えるとやっぱり不安は残ってしまいましたね。
毛ヅヤや馬体の張りなどは、もっと良くなる余地が有ったのではないでしょうか。
レースは後方から。スタートから鞍上の武豊騎手が全く促していなかったところをみると、最初からこういう競馬をするつもりだったようですね。
ただ、結果的にこの判断は悪いほうへ働いてしまいました。
道中はスローな流れの中で全く身動き出来ませんでしたし、直線でも馬群を捌くのに相当苦労していましたからね。
最後は中々の脚で追い込んで来るも、6番手まで来たところがゴール板という結果に。
個人的には色々と不安がある中で良くやったのではないかと思う結果でしたが、関係者にとっては消化不良の一戦になってしまったかもしれません。
■ニホンピロアワーズ 出来は中々良かったですね。ホッコータルマエやベルシャザールに比べるとアレでしたが、充分良い仕上がりと呼べる状態だったと思います。
心配されていた芝スタートですが、個人的には無難にこなしていたのではないかと思います。鞍上の酒井騎手にその気があれば、充分ポジションを奪うことが出来るスタートだったのではないでしょうか。
ただ酒井騎手は前半余り無理をせず、好位で脚を溜める戦法に出ましたね。結果的にこの判断は拙かったかなと思いました。
ニホンピロアワーズという馬は結構な大飛びで走る馬ですからね。控える競馬自体は全然問題なくこなすと思いますが、馬群が凝縮して思うようにストライドを伸ばせない競馬になると、リズム良く走れなくなってしまいます。
今回も常に四方に馬が居る形で、非常に窮屈そうに走っていました。
その中でポジションを押し上げられないこともあり、直線でも思うような末脚を発揮することが出来なかったニホンピロアワーズ。まさに消化不良といった一戦になってしまいましたね。
個人的にはまだまだ能力に衰えは無く、巻き返しは充分効くと思っていますので、また春以降立て直して頑張って欲しいと思います。
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