折からの大雨により、戦前の予想が一切役に立たないものへと変貌させられてしまった高松宮記念。
勝ち時計が1分12秒2という、レコードよりも5秒以上掛かった異例の戦いを征したのは、前哨戦阪急杯を制し勢いに乗る新星コパノリチャードだった。
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■パワフルだが柔らかい筋肉を纏っていたコパノリチャード 2歳時から筋骨隆々と形容するのがピッタリな、見栄えのする馬体を誇っていたコパノリチャード。
如何にもパワーがありそうな筋張った筋肉は、ともすれば硬さへと転じてしまうことが往々にしてあるのだが、今回同馬が纏っていた筋肉に硬さは全く感じられず、押せば弾力を持って押し返されるような柔軟性を保っていたように見えた。
歩様も依然見られたような重さはなくなり、スッスッと前脚が出ていたし、毛ヅヤも目立っていたコパノリチャード。
出走メンバー中でも明らかに上位の仕上がりで、GⅠ征するに相応しい状態でレースに臨んでいた。
■コパノリチャードが戴冠できた2つの理由 今回コパノリチャードが他馬を圧倒し、見事戴冠出来た理由は大きく分けて2つ。
一つ目は折からの大雨で田んぼと呼んで良いほどまでまで悪化してしまった不良馬場を、全くと言って良いほど苦にしなかった、道悪競馬に対する高い馬場適性。
二つ目はメインレースを迎えるまでに行われた幾つかの芝レースに騎乗し、馬場状態のリサーチをしっかりと行い、馬場状態を読みきっていたミルコ・デムーロ騎手の好騎乗。
馬の能力・仕上がりにプラスして、この2つの要素が高い次元で相まったからこそ、初のスプリントGⅠ挑戦にも関わらず、あれだけの完勝劇を見せ付けることが出来たのではないだろうか。
■道悪競馬への高い適性 馬場状態に関しては、明らかにコパノリチャードに対し味方したと思う。
500キロには届かないものの、480キロ代後半の雄大な馬体を誇っている同馬。
これだけ大量に雨が降り馬場に水が浸み込んでしまうと、「爪の形が・・・」とか「走法が・・・」などと言うような些細な違いよりも、大柄な馬体に比例するパワーそのものが何よりも重要視され、好走の鍵を握ることになる。
実際今回の高松宮記念の上位入線馬を見ると、3着のストレイトガールを除いて皆ダート競馬でも実績を残せそう、または残している馬ばかり。
大柄な馬体を誇り、馬体の造りからもダート競馬でも卓越した成績を残せそうなコパノリチャードが、この日の馬場で他馬を圧倒出来たのも、道悪馬場へのアドバンテージが他馬よりも大きかった為に他ならないと思う。
■本番前に得た情報をしっかりと活かす あと今回初めてコパノリチャードに騎乗したミルコ・デムーロ騎手の、素晴らしい手綱捌きも忘れてはならない。
デムーロ騎手は本番の高松宮記念までに何鞍か芝のレースに騎乗していたのだが、その中で明らかに本番の予行演習を試みているレースがあった。
それがメイン直前の、中京第10レース・名古屋城ステークス。
このレースでデムーロ騎手はシャドウバンガードに騎乗していたのだが、3コーナーから4コーナーにかけてシャドウバンガードが通った進路と、本番でコパノリチャードが通った進路がピッタリと重なっている。
また最後の直線こそシャドウバンガードの時よりも外を通しているが、この部分もシャドウバンガードに先着したアウォーディーやアドマイヤブルーが通った部分の、ちょうど中間点あたり。
それまでのレースで得た情報を、大事な本番でしっかりと活かしていることが良く分かる、素晴らしい騎乗振りだったと思う。
さすが名手!と、レースを見て思わず唸ってしまった。
■GⅠを手中にする為には実力だけでは駄目
これら要素を味方にし、見事GⅠ初戴冠を果たしたコパノリチャード。
この勝利を恵まれたものと見るか、実力で勝ち取ったものと見るかは人それぞれだろうが、一つ言えることはこれら外的要因を味方に引き入れる才能も、GⅠを勝つ為には必要であるということ。
ディープインパクトやオルフェーヴルのような突き抜けた能力があるなら話は別だが、基本最高レベルでの争いとなるGⅠレースを、その馬の能力だけを武器に勝ち切ることは至難の業だ。
今日までに誕生した多くのGⅠホースたちも、GⅠを勝つに相応しい能力を備えていることは大前提として、その他に何か別の要素を味方にし、悲願のビッグタイトルを手中にしてきた。
誰かが言っていたが、運を引き寄せるのも実力の一つである。その観点からコパノリチャードを改めて観察すれば、同馬が第44代高松宮記念馬に相応しい存在であることは疑いようのない、明確な事実なのだと確信している。
■秋には勢力図がどのように変化しているか楽しみ 王者ロードカナロア引退後のスプリント路線において、今回の勝利により一歩抜け出した存在となったコパノリチャード。
今回の高松宮記念が特殊な状況下で行われたのは間違いなく、この結果がそのまま秋のスプリンターズSにスライドするかは何とも言えないが、阪急杯でのパフォーマンスを見る限り秋も王者として君臨することが出来る可能性は、決して低くないと思う。
また秋には、今回馬場に泣かされた馬たちの逆襲も目にすることが出来るだろう。暫くはスプリント路線も群雄割拠の状態が続くと思う。
果たしてコパノリチャードが秋も王者として君臨するのか。それとも新星がその地位を取って代わるのか。暫くはこの状況を楽しめたらと思う。
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